吸収合併の手続き


吸収合併とは、合併により消滅する会社(吸収合併消滅会社)の権利義務の全部を合併後存続する会社(吸収合併存続会社)に承継させるものをいいます。

 

合併はすべての種類の会社(合名会社、合資会社、合同会社および株式会社)の間で行うことが可能ですが、特例有限会社及び清算会社は吸収合併存続会社となることはできません。(吸収合併消滅会社にはなることができます。)

 

吸収合併の流れ

吸収合併を行うには、合併当事会社が吸収合併契約を締結します。

 

吸収合併契約は、吸収合併存続会社および吸収合併消滅会社いずれにおいて株主総会の特別決議によりその承認を受ける必要がありますが、当該合併が簡易合併(小規模な合併)や略式合併に当る場合は、株主総会の承認は不要で、取締役会の決議による承認で足ります。

 

また、合併によって影響を受ける、株主や債権者といった利害関係者を保護するため、債権者保護手続が行う必要があり、また合併に反対な株主には、合併差止請求や株式買取請求が認められています。
吸収合併は、合併当事会社が定めた効力発生日に合併の効力が発生します。
合併の効力が発生した後、2週間以内に、管轄法務局で吸収合併の登記申請を行う必要があります。

 

以下では、吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社が株式会社の場合、吸収合併の手続きについて解説いしています。

 

吸収合併の手続き

吸収合併契約の締結

吸収合併を行い場合、合併当事会社は、合併契約を締結します。
会社法では、吸収合併においては、次の事項を定めなければならないとしています。
@吸収合併存続会社および吸収合併消滅会社の商号および住所
A吸収合併存続会社が吸収合併に際して、吸収合併消滅会社の株主に対してその株式に代わる吸収合併存続会社の株式その他の金銭等を交付するときは、交付する財産の種類、内容、数等、割当に関する事項

 

吸収合併契約に関する書面の事前開示

吸収合併存続会社は、吸収合併等の内容その他会社法施行規則で定める事項を記載した書面を作成し、吸収合併契約の承認に係る株主総会の日の2週間前の日、株式買取請求に係る通知・公告又は債権者保護手続に係る公告・催告のうちいずれか早い日(吸収合併契約書面備置開始日)から効力発生日後6か月を経過するまでの間、本店に備え置き、株主や債権者の閲覧等に供する必要があります。

 

事前開示事項
@合併対価の相当性に関する事項
A吸収合併消滅会社の新株予約権の対価の定めの相当性に関する事項
B吸収合併消滅会社の計算書類等に関する事項
C吸収合併存続会社について最終事業年度の末日以降の後発事象
D吸収合併後の吸収合併存続会社の債務の履行の見込みに関する事項
E吸収合併契約備置開始日後、前各号に掲げる事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

 

吸収合併消滅会社は、吸収合併等の内容その他会社法施行規則で定める事項を記載した書面を作成し、吸収合併契約書面備置開始日から効力発生日までの間、本店に備え置き、株主や債権者の閲覧等に供する必要があります。

 

事前開示事項
@吸収合併契約の内容
A合併対価の相当性に関する事項
B合併対価について参考となる事項
C吸収合併に係る新株予約権の定めの相当性に関する事項
D計算書類等に関する事項
E吸収合併後の吸収合併存続会社の債務の履行の見込みに関する事項
F吸収合併契約備置開始日後、前各号に掲げる事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

 

吸収合併契約の承認

吸収合併存続会社の承認手続

株主総会の特別決議
吸収合併存続会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、合併契約の承認を受ける必要があります。

 

株主総会の決議不要の場合

略式合併の場合
吸収合併消滅会社が吸収合併存続会社の特別支配会社である場合は、吸収合併存続会社の吸収合併の承認決議は、取締役会の決議(取締役会を置かない株式会社の場合は、取締役の過半数の一致)によって行うことができます。

 

吸収合併存続会社の総株主の議決権の90%以上を吸収合併消滅会社等が有している場合、吸収合併消滅会社は、吸収合併存続会社の特別支配会社に該当します。

 

ただし、合併対価として吸収合併存続会社の譲渡制限株式を交付する場合であって、吸収合併存続会社が非公開会社の場合は、株主総会の決議を省略することができません。

 

簡易合併の場合
吸収合併消滅会社の株主に対して交付する株式等の価額の合計額が吸収合併存続会社の純資産額の20%以下の場合、吸収合併契約の承認は、取締役会の決議(取締役会を置かない株式会社の場合は、取締役の過半数の一致)によって行うことができます。

 

ただし、次の場合は、吸収合併の承認につき、株主総会の決議を省略することはできません。
@合併対価として吸収合併存続会社の譲渡制限株式を交付する場合であって、吸収合併存続会社が非公開会社の場合
A吸収合併存続会社の承継債務額が承継資産額を超える場合(債務超過の会社を吸収合併する場合)
B会社法施行規則の規定により定まる数の株式を有する株主が合併に反対する旨を吸収合併存続会社に対し通知したとき

 

吸収合併消滅会社の承認手続

株主総会の特別決議
吸収合併消滅会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、合併契約の承認を受ける必要があります。

 

株主総会の決議不要の場合

略式合併の場合
吸収合併存続会社が吸収合併消滅会社の特別支配会社である場合は、吸収合併消滅会社の吸収合併の承認決議は、取締役会の決議(取締役会を置かない株式会社の場合は、取締役の過半数の一致)によって行うことができます。

 

吸収合併消滅会社の総株主の議決権の90%以上を吸収合併存続会社等が有している場合、吸収合併消滅会社は、吸収合併存続会社の特別支配会社に該当します。

 

債権者保護手続

効力発生日までに、1ヶ月を下らない一定期間を定め、次の事項を官報に公告し、且つ、知れている債権者に対して各別に催告しなければなりません。

 

定款で定めた公告方法が、時事に関する日刊新聞紙に掲載する方法又は電子公告による方法の場合、官報による公告の他、定款で定めた公告方法により公告することにより、知れている債権者への各別の催告を省略することができます。

 

公告・催告事項
@吸収合併をする旨
A吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社の商号及び住所
B吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社の計算書類に関する事項
C債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 

債権者が異議申述期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、吸収合併について承認したものとみなされます。

 

異議申述期間内に異議を述べた債権者がいる場合
当該債権者に対して、弁済、相当担保の提供、弁済を受けさせることを目的とする相当財産の信託のいずれかの措置を講じなければなりません。

 

ただし、吸収合併をしたとしても異議を述べた債権者を害するおそれがないときは、上記の措置を講ずる必要はありません。

 

反対株主の株式買取請求

吸収合併に反対の吸収合併存続会社の株主は、吸収合併存続会社(吸収合併に反対の吸収合併消滅会社の株主は、吸収合併消滅会社)に対して、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。

 

反対株主とは

吸収合併につき株主総会の決議を要する場合
@当該株主総会に先立って吸収合併に反対する旨を吸収合併存続会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該吸収合併に反対した株主
A当該株主総会において議決権を行使することができない株主

 

吸収合併につき株主総会の決議を要しない場合
すべての株主(特別支配会社を除く)

 

反対株主が、株式買取請求をするには、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社の場合は、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにする必要があります。

 

ただし、吸収合併につき株式総会の承認決議を要しない簡易合併による場合は、反対株主は、吸収合併存続会社に対して株式の買取りを請求することはできません。

 

株主への通知・公告

吸収合併存続会社の場合
吸収合併存続会社は、効力発生日の20日前までに、その株主に対して以下の事項について通知しなければなりません。
@吸収合併をする旨
A吸収合併消滅会社の商号及び住所
B承継する吸収合併消滅会社の資産に吸収合併存続会社の株式(自己株式)が含まれている場合は、当該株式に関する事項

 

吸収合併存続会社が公開会社の場合、又は吸収合併契約につき株主総会の決議により承認を受けた場合は、上記通知は、公告をもって代えることができます。

 

吸収合併消滅会社の場合
吸収合併消滅会社は、効力発生日の20日前までに、その株主に対して以下の事項について通知しなければなりません。
@吸収合併をする旨
A吸収合併存続会社の商号及び住所

 

吸収合併消滅会社が公開会社の場合、又は吸収合併契約につき株主総会の決議により承認を受けた場合は、上記通知は、公告をもって代えることができます。

 

吸収合併の登記

吸収合併をしたときは、吸収合併存続会社は、効力発生日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局において吸収合併による変更登記を申請する必要があります。

 

吸収合併消滅会社は、効力発生日から2週間以内に吸収合併存続会社の本店所在地を管轄する法務局経由により、本店所在地を管轄する法務局において吸収合併による解散登記を申請する必要があります。

 

吸収合併による変更登記および吸収合併による解散登記は同時に申請する必要があり、いずれも吸収合併存続会社の代表取締役が申請します。

 

吸収合併契約等に関する書面の事後開示

吸収合併存続会社は、効力発生日後遅滞なく、吸収合併により承継した吸収合併消滅会社の権利義務その他吸収合併に関する事項を記載した書面を作成し、効力発生日から6ヶ月間、本店に備え置き、債権者や株主の閲覧等に供さなければなりません。

 

吸収合併の登記手続のご相談・ご依頼

司法書士八木事務所では、吸収合併の登記手続関するご相談、ご依頼を承っております。お気軽にお問い合わせください。

 

当事務所の会社合併の登記手続きの手数料(報酬)の目安
165,000円〜

 

諸実費
@登録免許税(登記税金)
【吸収合併による変更登記】
課税標準金額(合併により増加した資本金額)の1000分の1.5
ただし、登録免許税法施行規則に規定する額を超過する部分については1000分の7
上記税額が3万円未満の場合は3万円
【吸収合併による解散登記】
3万円

 

A官報公告(合併公告)掲載料
【最終事業年度に係る決算公告済の場合】
吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社連名
8万円前後(行数により変動)

 

【最終事業年度に係る決算公告をしていない場合】
同時公告(合併公告と決算公告を同時に行う場合)
148,662円(決算公告1社で4枠の場合)
222,994円(決算公告2社で6枠の場合)

 

お問い合わせ
1 お電話によるお問い合わせ 
  052-848-8033

 

2 お問い合わせフォームからのお問い合わせ

 

お電話は平日10時から20時まで受け付けております。土日祝日は休業日ですが、事務所にいる時は対応いたしますので、一度おかけになってみてください。

 

お問い合わせフォームからのお問い合わせに対しては原則24時間以内に返信します。
(複雑で調査を要するお問い合わせは、回答までにお時間を頂くことがございます。)

 

正式なご依頼前に、見積手数料、相談料等の名目で費用を請求することは一切ございませんので、安心してお問い合わせください。

 

〒467−0056 
名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 
瑞穂ハイツ403号
司法書士八木隆事務所